「iDeCoに入るとおトク」「節税できる」
と聞いたことはありませんか。iDeCoについて気になってはいるものの、
「なんだか仕組みが難しそう……」
と、考えるのを後回しにしている人も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんなiDeCoの仕組みについて、スッキリわかりやすく解説します。
「iDeCoに加入すると、どうして節税できるの?」という疑問が解消できるよう、なるべくやさしい言葉を使って説明していきますね。
そもそも、iDeCoって何?
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、老後資金を貯めてもらうために国が作ったシステムです。
テレビやインターネットで「わたしたちが老後に受け取ることのできる公的年金は、年々減っていく」と聞いたことはありませんか。
厚生労働省が2014年に発表した「平成26年財政検証結果レポート—『国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し』(詳細版)—」によると、払う保険料に対して受け取ることができる厚生年金(=会社勤めの人や公務員が受け取る年金)の割合は、
1945年生まれの人が4.3倍なのに対し、
1995年生まれの人は2.3倍になると試算されています。
社会のあり方や人々の生活はどんどん変わっていくため、単純に数字のみで損得を判断することはできません。それでも、若い人はこのデータを見て「不公平だな…」と感じるのではないでしょうか。
同じだけ保険料を払ったとしても、老後にもらえる年金額はおよそ半分になってしまうんですものね。なんだか、将来が不安になってしまいます。
「公的年金だけじゃ足りなくなるかもしれない。それとは別に、自分で老後の生活費を貯めておかなければ…」
このように考える人も多いのではないでしょうか。
そこで役に立つのが、今回紹介するiDeCoです。
iDeCoは、老後のためにお金を貯める手助けをしてくれるサービスです。2001年に国が作った制度で「自分でつくる年金」と呼ばれています。
簡単に言うと、国が「公的年金じゃ足りないから、自分で老後に備えてお金を貯めておいてね、そのために手助けしてあげるから」と言っているんですね。
では、どのような手助けをしてくれるのでしょう。
それは、「節税」です。iDeCoという制度を使ってお金を貯めると、払わなければならない税金が減っておトクになるのです。
iDeCoで節税できる仕組み
iDeCoに加入すると、以下の3つの場面で節税ができます。
- 積み立てるとき
- 運用するとき
- 受け取るとき
それぞれ解説していきます。
「積み立てるとき」に受けられる節税効果
iDeCoで積み立てすると、所得税と住民税が安くなる!
毎月(もしくは毎年、2か月毎などの)決まった金額のお金を貯めていくことを「積み立て」といいます。
iDeCoで積み立てをすると、払わなければならない「所得税」と「住民税」を減らすことができます。詳しく紹介していきましょう。
iDeCoで所得税を節税できる仕組み
わたしたちが働いて得たお金の一部は「所得税」として引かれてしまいますよね。
iDeCoを使って積み立てをすると、その分のお金は所得税の計算対象から外してもらえるんです。
例えば、課税所得が400万円だとしましょう。
「課税所得」というのは、稼いだお金(収入)から、生きるために最低限必要なお金、家族を養うためのお金、保険料として払ったお金などを抜いた額のことです。
(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがあります。)
課税所得から所得税の額を計算するときには、下記の表を使います。
課税所得 | 所得税の金額 |
---|---|
195万円未満 | 課税所得 × 5% |
195万円以上330万円未満 | 課税所得 × 10% − 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 課税所得 × 20% − 427,500円 |
695万円以上900万円未満 | 課税所得 × 23% − 636,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 課税所得 × 33% − 1,536,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 課税所得 × 40% − 2,796,000円 |
4,000万円以上 |
上記の表を使って、まずはiDeCoをやっていないときの所得税額を考えてみましょう。
<iDeCoをやっていない人で、課税所得が400万円の場合の所得税額>
1年間に払わなければならない所得税の金額は、
4,000,000 × 20% - 427,500 = 372,500
で、37万2500円となります。(実際には、ここからさらに住宅ローン控除や配当控除等が適用されて、支払い額が下がる可能性があります。)
続いて、iDeCoで毎月1万円、年間で12万円積み立てをした場合の所得税額を考えてみます。
< iDeCoで年間12万円積み立てをしている人で、課税所得が400万円の場合の所得税額>
iDeCoで積み立てた分のお金は所得税の計算対象から外れるため、
(4,000,000 - 120,000)× 20% - 427,500 = 348,500
となり、1年間に払わねばならない所得税額は34万8500円。
つまり、iDeCoをやっていない場合と比べると、24,000円所得税額を減らすことができるというわけです。
iDeCoで住民税を節税できる仕組み
住んでいる都道府県や市区町村に支払わねばならない「住民税」。
iDeCoで積み立てをした分のお金は、所得税のときと同じように、住民税の計算対象からも外してもらえます。
住民税は「所得割」と「均等割」を足したものです。
所得割の税率は課税所得の10%、均等割は一律5,000円となっています。
(住んでいる地域によって、多少税率や金額が異なる場合もあります。)
では、課税所得が400万円のとき、住民税はいくらになるのか考えてみましょう。
<iDeCoをやっていない人で、課税所得が400万円の場合の住民税額>
4,000,000 × 10% + 5,000 = 405,000 で、1年間に払うべき住民税は40万5000円。
次に、iDeCoで毎月1万円、年間12万円積み立てた場合を考えます。
<iDeCoで年間12万円積み立てをしている人で、課税所得が400万円の場合の住民税額>
(4,000,000 - 120,000)× 10% + 5,000 = 393,000 となり、1年間に払う住民税は39万3000円。
iDeCoをやっていない場合と比べると、12,000円住民税が安くなっていますね。
今回は月1万円で計算してみましたが、積み立て額が増えると、その分節税できる金額もアップしますよ。
「運用するとき」に受けられる節税効果
iDeCoで運用すると、利益が非課税になる!
iDeCoで積み立てるお金は、ただ貯めておくだけでなく、何らかの金融商品で運用する必要があります。
ここでいう金融商品というのは、預金や投資信託などのこと。いくつも種類がある金融商品の中から、自分が好きなものを選んで運用します。
お金を運用すると、利益(=もうけ)を得ることができます。
- 預金で運用する場合 → 満期の時に入る利息が利益になります。
- 投資信託で運用する場合 → 買った時の価格と売った時の価格の差が利益となります。
それらの利益には、普通なら20.315%の税金がかかります。
例えば、投資信託で10万円儲かった場合は20,315円が税金として引かれるため、手元に残るお金は79,685円となります。
しかし、iDeCoの場合はその税金が一切かかりません。10万円の利益が出たら、それはすべてあなたのものとして、老後のために積み立てられていきます。
儲かった分を全てまた運用に回すことができるので、効率よく利益を増やすことができる、というわけなんです。
ちなみに…現在、日本の預金の利率はかなり低いです。
例えば、2021年3月における「三井住友銀行確定拠出年金定期預金(3年)」の利率は、年に0.002%。
ほとんど利益が出ないため、iDeCoで積み立てるお金の預け先を預金にしてしまうと、「利益が非課税になる」という節税効果にも大した意味はなくなってしまいます。
「利益が非課税になる」というメリットを十分に活用したい場合は、投資信託で運用することをおすすめします。
「投資信託についてよく知らないし、お金が減ってしまう可能性もあるのは怖い…」
「儲からなくていいから、決して損しない商品で運用したい」
という気持ちが強い人は、預金を選んで積み立てていきましょう。
iDeCoで老後にお金を「受け取るとき」の節税効果
iDeCoを受け取るとき「公的年金等控除」や「退職所得控除」が使える!
iDeCoで積み立てたお金は、原則60歳になったら受け取ることができます。受け取り方は以下の2つ。
- 年金として定期的に少しずつ受け取る方法
- 退職金のように一括で受け取る方法
どちらの受け取り方を選んでも、おトクな節税の制度を利用することができます。
国民年金、厚生年金などの公的年金や、勤め先から受け取る退職金は、老後の生活を支える重要な役割を果たしていますよね。そのため、税金として手元から引かれる金額をなるべく少なくする制度を、国が整えているんです。
そして、iDeCoを年金や退職金として受け取るときも、それらの制度が適用されるというわけです。
どんな制度なのか、詳しく説明していきましょう。
iDeCoを年金として受け取る場合
iDeCoを年金として少しずつ受け取る場合、「公的年金等控除」という制度が使えます。
公的年金控除は、その名の通り公的年金を受け取るときに使える節税制度なのですが、iDeCoの場合にもまとめて適用されます。
年金(公的年金+iDeCo)を受け取ると、税金を払わなくてはいけません。
しかし、公的年金等控除が適用されるため、収入金額全てに税金が課されるというわけではないんです。下記の表で計算できる「公的年金等にかかる雑所得」にのみ、税金がかかってきます。
<65歳未満の公的年金にかかる雑所得(※その他の所得の合計が1,000万円以下の場合)>
公的年金等の収入金額 | 税金が課される所得金額(=公的年金等にかかる雑所得) |
---|---|
60万円以下 | 0円 |
60万円を超え 130万円未満 | (公的年金等の収入金額) − 600,000円 |
130万円以上 410万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 75% − 275,000円 |
410万円以上 770万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 85% − 685,000円 |
770万円以上 1,000万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 95% − 1,455,000円 |
1,000万円以上 | (公的年金等の収入金額) − 1,955,000円 |
<65歳以上の公的年金にかかる雑所得(※その他の所得の合計が1,000万円以下の場合)>
公的年金等の収入金額 | 税金が課される所得金額(=公的年金等にかかる雑所得) |
---|---|
110万円以下 | 0円 |
110万円を超え 330万円未満 | (公的年金等の収入金額) − 1,100,000円 |
330万円以上 410万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 75% − 275,000円 |
410万円以上 770万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 85% − 685,000円 |
770万円以上 1,000万円未満 | (公的年金等の収入金額)× 95% − 1,455,000円 |
1,000万円以上 | (公的年金等の収入金額) − 1,955,000円 |
つまり、1年間で受け取った公的年金とiDeCoの合計が、65歳未満なら60万円、65歳以上なら110万円以下であれば、税金はかからないことになりますね。
iDeCoを一括で受け取る場合
iDeCoを一括で受け取る場合、「退職所得控除」という制度が使えます。
退職所得控除とは、勤め先からもらえる退職金とiDeCoの合計額から、下記の表で計算された金額を引いた額(退職所得控除額)にのみ、税金が課されるという制度です。
勤続年数またはiDeCoで積み立てした年数のうち、どちらか長い方 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × (勤続年数またはiDeCoで積み立てした年数の長い方) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数またはiDeCoで積み立てした年数の長い方 − 20年) |
例えば、
<勤続年数20年で iDeCoで10年間積み立てをしていた人の退職金が500万円、iDeCoで受け取る金額が180万円>
の場合、勤め先から受け取る退職金とiDeCoを合わせた金額は、
5,000,000 + 1,800,000 = 6,800,000 で、680万円。
退職所得控除額は、
400,000 × 20年 = 8,000,000で、800万円。
680万円 < 800万円で、退職所得控除額よりも受け取った金額の方が多いことになりますから、この場合は税金がかからないということになりますね。
iDeCoを年金として受け取ったのちに一括で受け取る場合
ここまで、iDeCoを受け取るときに適用される「公的年金等控除」と「退職所得控除」について説明してきましたが、金融機関によってはこれらの制度を両方とも使える場合があります。
- 公的年金を受け取ることができない60〜64歳の間 → iDeCoを年金として受け取って、公的年金等控除を使う
- 65歳以降 → 残りの金額をまとめて受け取って、退職所得控除を使う
という方法もありますので、自分にとっておトクになる方法を選びましょう。
まとめ
今回、iDeCoで節税ができる仕組みについて説明してきました。
iDeCoに加入すると節税ができる理由は、次の3つです。
なお、 iDeCoには、
といったデメリットがあります。
しかし、それを差し引いても、老後の資産を作るために便利な方法と言えるのではないでしょうか。
無理せず「60歳までは使わない!」と断言できる金額だけをiDeCoで積み立てれば良いですし、手数料よりも節税できる金額の方が大きければオトクになりますからね。
この記事を読んで「iDeCoっていいな」と感じた方は、加入を検討してみてはいかがでしょうか。
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